かつて、町の夕暮れには提灯が灯り、家族連れの笑い声が夜空に溶けていました。金魚すくいや焼きそばの香り、はじける音とともに鳴り響く太鼓のリズム。
それは子どもたちの夏の原風景であり、大人たちにとっても忘れがたい記憶のかけらでした。

しかし、時代の流れとともに、その風景は少しずつ姿を消していきました。
 

「担い手がいない」

「予算が出ない」

「誰がやるのか分からない」
 

そんな声が当たり前になり、地域の夏祭りは次々と途絶えていきました。気づけば、夜の屋台も、はしゃぐ子どもたちの姿も、すっかり見かけなくなりました。
 

それは“仕方のないこと”なのでしょうか？

本当に、誰にも何もできないまま、ただ終わらせてしまってよいのでしょうか？

 

──「もう一度、あの感動を」

 

私たちが取り戻したいのは、ただ懐かしむだけの“ノスタルジー”ではありません。今、この町で育っている子どもたちが、数年後、ふと振り返ったときに
 

「あの夏、町に灯りがともった」

「自分が主役になれた」
 

そう胸を張って語れるような、“たった一度の本物の夏”を贈りたいのです。

 

未来に記憶を手渡すために。
 

誰かが動かなければ、

この夏も、静かに通り過ぎてしまうから──。